アレントによれば〈労働〉とは、人間の肉体によって消費されるものに関わる営みである。たとえば食料や衣料品の生産などがそれに当たる。それはかつて奴隷によって担われていた。だから〈労働〉は忌み嫌うべき行為であった(この点はヴェブレンの『有閑階級の理論』を思い出せば簡単に理解できるだろう)。
それに対し、〈仕事〉は世界に存在し続けていくものの創造であり、たとえば芸術がその典型である。〈労働〉の対象は消費されるが、〈仕事〉の対象は存続する。ゆえに〈仕事〉は〈労働〉に比べて高い地位を与えられてきた。肯定的に捉えられてきたのである。
このように両者を区別した後で、アレントは次のように言う。なぜ労働が否定されたり、肯定されたりするのか? それは哲学者たちが〈労働〉と〈仕事〉を混同していたからである。同じ行為の〈労働〉的側面がピックアップされれば否定的に論じられるし、〈仕事〉的側面が注目されれば好意的に受け止められるというわけである。
國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(新潮社、2021年)