「母さんは小六のときにも『そういう子なので』と言ってくれた」
苦い記憶が思い出されて、のどの奥が苦しくなる。
「ごめんね、あのときはそう言うしかなかったから……」
「わたしはうれしかったんだ」
思いがけない評価に、「へっ?」と変な声が漏れた。
「そういう子だって認めてくれているんだとわかったから、卒業文集にも『二百歳まで生きる』と書けた」
宮島未奈『成瀬は都を駆け抜ける』(新潮社、2025年)
「母さんは小六のときにも『そういう子なので』と言ってくれた」
苦い記憶が思い出されて、のどの奥が苦しくなる。
「ごめんね、あのときはそう言うしかなかったから……」
「わたしはうれしかったんだ」
思いがけない評価に、「へっ?」と変な声が漏れた。
「そういう子だって認めてくれているんだとわかったから、卒業文集にも『二百歳まで生きる』と書けた」
宮島未奈『成瀬は都を駆け抜ける』(新潮社、2025年)
私はティッシュを二枚とり、すばやくとんとんしながら、保育園のときにもこういうことがあったなあと思い出して、人間って変わらないなあと主語を大きくしながら恥ずかしさを誤魔化すための感慨にふけり、でも、他人と一緒に住むって、失敗を笑ってもらえるということでもあるのだなあと、うれし恥ずかし感じ入り、そういう、私たちの、はじめての夜だった。
小原晩『これが生活なのかしらん』(大和書房、2023年)