人口一〇万人の都市で、失業者が一人とすれば、それは私的問題である。こうした場合は、救済のためには当然、その人の性格、能力、すぐに可能な雇用募集などを見ればよい。しかし、就業人口五〇〇〇万人の国において、一五〇〇万人が失業していたら、それは公的問題である。こうした場合は、特定一個人の雇用機会を見ているだけでは、解決策を見出すことはできない。雇用の構造そのものが崩壊してしまっているのだ。問題を正しく立て、的確な解決策を探るためには、個々人の生活圏や内面だけでなく、その社会の政治経済制度を検討することが必要である。
[…] ひとりひとりの個人に固有のものである多彩な生活圏において経験するものは、しばしば構造変動に起因する。したがって、多くの個人的な生活圏における変化を理解するためには、それらを超えて物をみる必要がある。そして、私たちがそのなかで生きている諸制度が、相互に関連し、複雑に絡みあえば絡みあうほど、そうした構造変動の数や種類は増える。社会構造という概念を知り、それを感性豊かに用いることで、様々な生活圏の結びつきを明らかにすることができる。それが、社会学的想像力をもつということである。
С・ライト・ミルズ『社会学的想像力』(ちくま学芸文庫、2017年)