とにかく、ごちゃごちゃと人が多い。都市を一言で特徴づけるなら、この人の多さを置いてほかにないとオルテガは考えました。しかも、多様な背景や属性を持った人が集まっているにもかかわらず、そんな多様性なんてなかったみたいに、同じ場所にみなが殺到しているのです。
リモートワークの普及で、あるいは、地方移住者の増加で事情が変わったと思われるかもしれません。しかし、「話題に居合わせること」へのこだわりだと理解すれば、オルテガの議論は変わらず有効です。みんなが注目しているニュースやコンテンツに群がったり、みんなが話題にするゴシップに一応目を通しておいたりするさまを思い出すといいでしょう。このように、対面であれネット上であれ、「ごちゃごちゃと人が集まり群がっている」ということが、私たちの社会の基本的な特徴の一つだというのは確かです。
谷川嘉浩『増補改訂版 スマホ時代の哲学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2025年)