「定食」の素晴らしいところはそこに一つの完結した宇宙――ミクロコスモス――があることだ。そこには主菜があり、副菜があり、主食があり、汁物がある。場合によってはデザートもある。僕たち人類が「食」に求めるものの「すべて」がそこに詰まっている。僕は定食の小皿に盛られたおかずたちに、順に箸を伸ばしながらごはんを口に運ぶ、いわゆる「三角食い」が好きだ。「三角食い」をすることで、人間はある料理がその皿だけで完結しないことを知る。ナス味噌が、白米と往復することでよりその力を発揮することを、そしてその流れでメンチカツを齧ることで、世界がより完全体に近づくことを知ることができるのだ。これは、皿ごとに時間を置いて出てくるコース料理においては覆い隠されている世界の真実なのだ。
宇野常寛『ラーメンと瞑想』(集英社、2025年)