「あなたに何が分かるのよ。進学だって就職だって何一つ上手くいかなかったくせに。友達なんか一人もいないくせに。そうやって、何もしないことで、怠惰に暮らすことで、私を責めているんでしょ? いい加減、立ち直りなさいよ。ちゃんと生きなさいよ。あなたが惨めったらしい姿で家の周りをうろちょろするから、私はいつまで経っても高校時代から先に進めないんじゃないの!」
「加害者が被害者に言う台詞じゃないなあ、それ」
とくに傷ついた様子もなく、圭子はふふふ、と笑ってみせた。
「進学も就職も、なんでも努力して上手くやってきたあんたにも、友達がいないのは不思議だね」
栄利子がエレベーターに乗ろうと歩き出そうとしたその時、圭子は優しい口調でこう言った。
「つまりさ、頑張ってもどうにか出来るもんじゃないんだよ。友達だけはさ」
柚木麻子『ナイルパーチの女子会』(文藝春秋、2015年)