2024-06-09
Hugo + Netlify + DecapCMS を使ったサイト構築
35歳の誕生日を機に、個人サイト(ブログ)をリニューアルすることにした。
以前より、Hugo + Netlify を使って個人サイトを配信していたのだが、この仕組みには「記事の更新作業に手間がかかる」という問題があった。
静的サイトジェネレーター兼コンテンツ管理として Hugo があり、Netlify がホスティングを担っているのだが、実際に記事を更新する際は、次のような手順となる。
- Github リポジトリを pull する(僕は複数台のマシンを使っているので、ローカルを最新状態に同期する必要がある。)
- mdファイルを追加し、そこにブログ記事を書く
- Github に push する
- Netlify が更新を検知し、build → deploy を実行する(=サイトが更新される)
この手順から、Github に対する操作を省きたい。つまり、一般的なブログサービスのように(あるいは Wordpress サイトのように)「ブラウザで管理画面を開き、記事を更新する」という手続きにしたい。
そこで Decap CMS(旧・Netlify CMS)を使ってみることにした。ヘッドレスCMSの代表格で、特にGitベースであるという点が大きい(コンテンツの変更履歴を Git で管理できる)。
また、併せてサイトのデザインも一新することにした。以前は Hugo に不慣れなこともあり、無料配布されていた Hugo テーマを流用して改造しながら使っていたのだが、その運用を4〜5年ほどしたことで Hugo の仕組みにもだいぶ詳しくなった。そこで Hugo テーマをフルスクラッチで作ってみることにした。
各ツールの役割の確認
- Hugo : 静的サイトジェネレーター。Markdown ファイルを HTML に変換して静的なウェブサイトを生成してくれる。静的サイトにはロマンがある。Golangで書かれているため動作が高速で、Goテンプレートエンジンによる柔軟なテンプレートシステムが魅力的。
- Netlify : 静的サイトのホスティングサービス。Git リポジトリと連携して自動デプロイを行う。
- Decap CMS : オープンソースのヘッドレスCMS。GUIベースの管理画面を提供し、静的サイトジェネレーターと連携してコンテンツを管理する。実装後に重大な落とし穴が発覚する(後述)。
1. サイトの基本形を作成
まずはまっさらな状態から Hugo プロジェクトを作っていく。
1. Hugo プロジェクトを作成
hugo new site ezeroms.com
cd ezeroms.com
2. カスタムテーマの準備
Hugo プロジェクトで推奨されている形は、root ディレクトリの下に /site
とかで区切って、テーマ等を置くディレクトリを一段下で管理する方法だ。これは、root ディレクトリでサイト設計やデプロイに関するメタ情報を管理し、具体的なサイト自身の設定や見た目と分離することで、複数テーマも管理やスケーラビリティを確保しようとするものだ。
しかし、今回のサイトの場合はテーマを切り替えることはない(自分でアップデートし続ける)し、プロジェクトの規模も小さいので、構造のシンプルさを優先して全て root ディレクトリ直下で管理する方法にした。
ezeroms.com
├── archetypes
│ └── index.html
├── content
│ ├── about
│ │ └── _index.md
│ ├── diary
│ │ └── _index.md
│ ├── shoulders-of-giants
│ │ └── _index.md
│ └── work
│ └── _index.md
├── layouts
│ ├── _default
│ │ ├── baseof.html
│ │ └── rss.xml
│ ├── about
│ │ └── index.html
│ ├── diary
│ │ ├── index.html
│ │ └── single.html
│ ├── month
│ │ └── list.html
│ ├── partials
│ │ ├── header.html
│ │ ├── footer.html
│ │ ├── global-nav.html
│ │ └── ...
│ ├── shoulders-of-giants
│ │ └── index.html
│ ├── subject
│ │ └── list.html
│ ├── topic
│ │ └── list.html
│ │── work
│ │ ├── index.html
│ │ └── single.html
│ └── index.html
├── public
├── static
│ ├── admin
│ │ ├── config.yml
│ │ └── index.html
│ ├── css
│ └── images
├── config.toml
└── netlify.toml
- public : hugo server で build されたファイルが格納される場所。キャッシュが邪魔しているのか?と思ったときは全削除したりする。
- content/*/_index.md : 一見不要そうだが、ここに index の md ファイルがないとディレクトリを正しく認識してくれない。
- static/admin : Decap CMS の管理画面用のファイル群。
2. 本番環境と自動デプロイの設定
1. GitHub リポジトリの作成
git init
git add .
git commit -m "Initial commit"
git remote add origin <GITHUB_REPO_URL>
git push -u origin main
2. Netlify アカウントの作成
3. Githubリポジトリの連携
Netlify の管理画面で「New site from Git」を選択し、GitHubリポジトリを連携。
4. ビルド設定
Build Command: hugo
Publish Directory: public
これで、Github の main ブランチが更新されると、Netlify側で自動デプロイが走るようになる。
5. ドメイン設定
Netlify の管理画面で ezeroms.com
を割り当てる。
3. 詳細なサイト構築(テーマファイルの編集)
layouts 以下のテーマファイルと static/css をひらすら編集し、理想的なデザインを作り上げていく。自分一人のプロジェクトということもあり、あらかじめ全てのページを Figma で作ることはせず、主だったページのレイアウト構成だけ Figma 上で検証して、スタイリングについては実装しながら検討していった。褒められた方法ではないが、こういうところがソロ・プロジェクトの爽快なところだ。
コツ : テーマファイルへのマーキング
hugo server で localhost を確認しながら作っていくのだが、描画されているページに適切なテーマファイルが当たっているのかどうか分からなくなる。(「このページにこのテーマファイルが当たってほしいのに当たらん〜〜〜〜」的なことが続く)
そこで、すべてのテーマファイルに以下のようなマーキングした上で、config.toml の設定と、テーマファイルのディレクトリやファイル名を少しずつ弄りながら検証していった。
<!-- debug-info -->
<p class="debug-info">File : /layouts/subject/list.html</p>
最終的にこんなかんじで出来上がる。
課題 : URLスキーム
本当はもっとURLスキームに拘りたかったのだが、どうやってもできず(Decap CMS管理の範囲外を作ることになり)断念した。いい方法を知っている人がいたら教えてほしい。
# 理想的なURLスキーム
ezeroms.com/diary/
ezeroms.com/diary/subject/news/
ezeroms.com/diary/month/2024-06/
# 実際のURLスキーム
ezeroms.com/diary/
ezeroms.com/subject/news/
ezeroms.com/month/2024-06/
4. CMSを導入してブラウザから更新できるようにする
package.json を作成し、Decap CMSをインストール。
npm init -y
npm install netlify-cms-app
static/admin ディレクトリの config.yml 、index.html を編集してセットアップし、ezeroms.com/admin にアクセスすれば管理画面が使えるようになる。めっちゃ簡単だ。
管理画面の自由度がとても高く config.yml で設定すると一覧の表示項目も柔軟に変更することができる。
backend:
name: git-gateway
branch: main
media_folder: "/static/images/uploads"
public_folder: "/images/uploads"
collections:
- name: "about"
label: "About"
folder: "content/about"
create: true
slug: "{{fields.slug}}"
fields:
- { label: "Body", name: "body", widget: "markdown" }
summary: "{{body}}"
- name: "diary"
label: "Diary"
folder: "content/diary"
create: true
slug: "{{fields.slug}}"
media_folder: "/static/images/diary/{{fields.slug}}"
public_folder: "/images/diary/{{fields.slug}}"
fields:
- { label: "Title", name: "title", widget: "string" }
- { label: "Date", name: "date", widget: "datetime", date_format: "YYYY-MM-DD", time_format: false }
- { label: "Slug", name: "slug", widget: "string" }
- { label: "Month", name: "month", widget: "list" }
- { label: "Subject", name: "subject", widget: "select", multiple: true, options: ["news", "music", "manga-and-anime", "movies-and-dramas", "comedy", "gaming", "sports", "books-and-magazines", "languages-and-foreign-cultures", "design-and-creative", "internet-and-technology", "natural-science", "humanities-and-social-sciences"] }
- { label: "Body", name: "body", widget: "markdown" }
summary: "{{date | date('YYYY-MM-DD')}} | {{body | truncate(280, '...')}}"
sort:
field: "date"
direction: "desc"
- name: "work"
label: "Work"
folder: "content/work"
create: true
slug: "{{fields.slug}}"
media_folder: "/static/images/work/{{fields.slug}}"
public_folder: "/images/work/{{fields.slug}}"
fields:
- { label: "Title", name: "title", widget: "string" }
- { label: "Date", name: "date", widget: "datetime", date_format: "YYYY-MM-DD", time_format: false }
- { label: "Slug", name: "slug", widget: "string" }
- { label: "Image", name: "image", widget: "image" }
- { label: "Body", name: "body", widget: "markdown" }
summary: "{{date | date('YYYY-MM-DD')}} | {{title}}"
sort:
field: "date"
direction: "desc"
- name: "shoulders-of-giants"
label: "The shoulders of Giants"
folder: "content/shoulders-of-giants"
create: true
slug: "{{fields.slug}}"
fields:
- { label: "Topic", name: "topic", widget: "list"}
- { label: "Body", name: "body", widget: "markdown" }
summary: "{{body | truncate(280, '...')}} Topic {{topic}}"
sort:
field: "body"
direction: "asc"
Decap CMS の落とし穴
さて、これで理想的な個人ブログの運用体制が構築できた…と思っていたのだが、ここで Decap CMS の大きな落とし穴が発覚する。
記事のテキストフィールドが、日本語入力に対応できていないのだ。漢字変換をしようとしたときにキャレットの位置がズレてしまい、正常に入力作業をすることができない。
Updating Slate editor to support Korean
どうやら Slate のバージョンが古いのが原因らしく、改善のためのプルリクは出ているのだがスルーされているっぽい。
(写真) Issueが立っていたのでむなしくコメントを残しておいた。
なので、このサイトの実際の運用は次のようになっている。
- UpNote でコンテンツ管理(UpNote はモバイル用のネイティブアプリが用意されている)
- UpNote から DecapCMS にコピペして記事を更新
記事の編集作業部分をテキストエディタに外出ししている状態だ。以前に比べれば格段に更新しやすくはなったものの、できればブラウザで完結する運用を目指したい。
もちろん、ヘッドレスCMSには Decap CMS 以外にも選択肢はあるのだが、Netlify との相性と「無料で使える」という条件で探すと少し絞られてしまう(APIでやりとりするものは使いたくない)。また、できればスマホから更新ができるように、モバイル用インターフェースが提供されているとなお嬉しい。もう少し調べてみようと思う。