Apr 9, 2023
「音楽本大賞」第一次選考通過作品リスト
「音楽本大賞」について
すぐれた音楽本の存在をもっと知ってもらい、もっと多くの読者に届けたい、さらには書店の音楽本コーナーをもっと盛り上げたい―――「音楽本大賞」は、そんな思いから生まれたプロジェクトだ。
僕がこの賞を知ったのは、TBSラジオ「アフター6ジャンクション 」がキッカケだった。現在、クラウドファンディング で運営資金を募っていて、既に目標額には達しているが、僕も微力な駄目押しとして支援させてもらった。
さて、この記事は、そんな「音楽本大賞」の一次審査を通過した作品を、本の内容やAmazonリンクとともに一覧にまとめたものだ。
一次審査を通過した本は、読者賞の投票フォーム という形で公開されているのだけど、こういうものは投票期間が終われば閲覧できなくなってしまうかもしれない。そこで、控えを残そうと考えた。転載と同時に本の内容を調べ、できあがったリストを眺めてみると、書影や概要がザッと総覧できることで「音楽本大賞」の雰囲気が浮かび上がって見えることに気がついた。
これは、「音楽本大賞」というもののイメージを伝えるには、かなり効果的な情報のように思える。
そこで、手元に留めておくにはもったいないと思い、ブログで公開することにした。「音楽本大賞」について理解を深めたり、読書活動のサポートなどに役立ててもらえたら嬉しい。
※ Amazonリンクについて、紙版とKindle版があるものは、Kindle版を優先しています。
※ 書籍の概要は、Amazonの説明文から引用していますが、一部省略している箇所や、要約したものもあります。
菅原慎一、パンス(監修)『アジア都市音楽ディスクガイド』DU BOOKS
https://www.amazon.co.jp/dp/B09R7W6951
70年代の名作から、配信のみの新世代まで、アジア音楽のディガーたちが各国の良曲を厳選。City Pop, Light Mellow, Future Funk, Boogieのファンにもオススメする600曲!
「都市音楽」とは?
「シティポップ」と形容される音楽も含む、それら様々なジャンルの総体を本書では「都市音楽」と名づけてみました。そこには、現在、「シティポップ」として注目されている日本のミュージシャンと同じように、西洋の音楽を取り入れ、各国&各都市の文化を反映させながら、いわゆる「洗練」を追求しようと試行錯誤、創意工夫してきた歴史がありました。
田中健次『図解 近現代日本音楽史 唱歌、校歌、応援歌から歌謡曲まで』東京堂出版
https://www.amazon.co.jp/dp/4490210558
西洋音楽の影響で発展した日本の近代音楽について、その発展と進化の歴史をわかりやすく図解説明。 子どもの歌、軍歌、はやり歌、学生歌の4ジャンルに分けて俯瞰してとらえ、網羅的に音楽教育と近代音楽の歴史を解説する。
つやちゃん『わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論』DU BOOKS
https://www.amazon.co.jp/dp/B09RPSYT2G
マッチョなヒップホップをアップデートする革新的評論集!
日本のラップミュージック・シーンにおいて、これまで顧みられる機会が少なかった女性ラッパーの功績を明らかにするとともに、ヒップホップ界のジェンダーバランスおよび「フィメールラッパー」という呼称の是非についても問いかける。
■ RUMI、MARIA(SIMI LAB)、Awich、ちゃんみな、NENE(ゆるふわギャング)、Zoomgalsなど、パイオニアから現在シーンの第一線で活躍するラッパーまでを取り上げた論考に加え、〈“空気”としてのフィメールラッパー〉ほかコラムも収録。
■ COMA-CHI/valkneeにロングインタビューを敢行。当事者たちの証言から、ヒップホップの男性中心主義的な価値観について考える。
■ 2021年リリースの最新作品まで含むディスクガイド(約200タイトル)を併録。安室奈美恵、宇多田ヒカル、加藤ミリヤ等々の狭義の“ラッパー”に限らない幅広いセレクションを通してフィメールラップの歴史がみえてくる。
藤倉大『どうしてこうなっちゃったか』幻冬舎
https://www.amazon.co.jp/dp/B09PY4G1JF
これが世界に通用する、謙虚さと自由さと厚かましさだ! いま「世界でもっとも演奏機会が多い」と言われる天才「現代音楽作曲家」の自伝エッセイ。この天衣無縫、融通無碍、唯我独尊、縦横無尽を見よ!
田崎直美『抵抗と適応のポリトナリテ ナチス占領下のフランス音楽』アルテスパブリッシング
https://www.amazon.co.jp/dp/4865592482
レジスタンスか対独協力か……
脱出、潜伏、あるいは転向か──
隠された音楽史を跡づける画期的研究。
第二次世界大戦期の4年間(1940-44)、ナチス・ドイツに占領されたパリでは、戦前以上に多彩な音楽活動が展開していた。その裏には、「音楽」に政治的役割を強く期待したヴィシー政権の政策と、厳しい状況の中でしたたかに生き抜く音楽家たちの葛藤があった。
本書は、戦後多くの音楽家の心に傷跡を残し、これまで正面から語られることのなかった占領期フランスの音楽史を、当時の文化政策と各音楽家ごとのケース・スタディの両面から明らかにする。
大田美佐子『クルト・ヴァイルの世界 実験的オペラからミュージカルへ』岩波書店
https://www.amazon.co.jp/dp/4000226452
ブレヒトと作った《三文オペラ》の作曲家として有名なヴァイル。若くしてヨーロッパで成功を収めたが、ナチスに追われアメリカに亡命。戦後、ミュージカル界での成功を「大衆迎合主義」への転向とアドルノに批判され、その豊かな世界は忘れられる。没後70年を経て再評価が進む「二つのヴァイル」の実像を詳細に描き出す。
濱田滋郎『南の音詩人たち アルベニス、セヴラック、モンポウの音楽』アルテスパブリッシング
https://www.amazon.co.jp/dp/4865592547
誰よりも音楽を愛し、誰からも愛された至誠の人・濱田滋郎(1935-2021)が生涯の最後に取り組んだ作曲家論を1冊に集成。
19世紀後半のスペイン民族主義を代表する作曲家アルベニス、19世紀末から20世紀初頭に南仏を拠点に活躍し、ドビュッシーから「土の薫りのする素敵な音楽」と評されたセヴラック、カタルーニャに生まれ20世紀音楽の激流から離れて内省的で静謐な音楽をひとり紡いだモンポウ──。
濱田がもっとも愛した3人の作曲家の生涯と芸術、主要な作品を情趣あふれる筆致で紹介。スペイン、フランスの近代音楽のファン、ピアニストにとって必読の書。
原塁『武満徹のピアノ音楽』アルテスパブリッシング
https://www.amazon.co.jp/dp/4865592539
日本の20世紀音楽を代表する作曲家・武満徹(1930–1996)。
日本の伝統楽器を大きくフィーチャーした《ノヴェンバー・ステップス》で広く知られる不世出の作曲家は、“もっとも西洋的な楽器"であるピアノを愛し、キャリアの初期から晩年まで、この楽器のために作曲した。
楽譜を緻密に分析するだけでなく、名文家として知られる武満のテクストを精緻に読解することにより、その技法と美学が織りなす螺旋形を、戦後日本固有のコンテクストのなかに描きだす。
ひのまどか『音楽家の伝記 はじめに読む1冊 小泉文夫』ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
https://www.amazon.co.jp/dp/4636977297
人間に音楽は必要か? 彼は答えを求めて世界じゅうをかけめぐった シリーズ初の日本人伝記が登場! 音楽研究の世界で重要な成果を残し、マルチな才能を生かして「民族音楽ブーム」の火付け役ともなった稀代の音楽学者・小泉文夫。彼のけた外れの活動は日本社会にも大きな影響を与えました。新しい世代に贈る一冊。
クローヴァー・ホープ/押野素子(訳)『シスタ・ラップ・バイブル ヒップホップを作った100人の女性』河出書房新社
https://www.amazon.co.jp/dp/B09T8ZD89C
ヒップホップは、優れた女性ラッパーたちが作ったものでもあった――これまで語られることのなかったその歴史をクールなイラストと共に紹介する2020年代のヒップホップ・バイブル!
ヴィヴ・アルバーティン/川田倫代(訳)『服 服 服、音楽 音楽 音楽、ボーイズ ボーイズ ボーイズ』河出書房新社
https://www.amazon.co.jp/dp/4309291880
UKパンクロックの伝説的女性バンド「ザ・スリッツ」のギタリストである著者が綴った回想録。常識を覆す音楽活動、そして解散から現在までの波乱の人生など、世界的に高評価を得た作品。
陣野俊史『魂の声をあげる 現代史としてのラップ・フランセ』アプレミディ
https://www.amazon.co.jp/dp/B0B3HKTP74
世界中で関心が高まっている、「声をあげる」ことの重要さ。 ラップをとおして世界を知ろう。 郊外の貧困、移民、宗教、暴動、テロ、#MeToo… 世界を取り巻く社会問題に対して放たれるラップのリリック(歌詞)は、国境を越えてわたしたちを鼓舞し、今につながる世界の歴史を知ることの大切さを気づかせてくれます。 移民社会フランスに生きるルーツもスタイルも多様なラッパーたち。 彼らのあげる声をとおして、広い世界に目を向けてみてはいかがでしょうか? わたしたちの「いま」と「ここ」がラップにはある――。
フランソワ・デュボワ/木村彩(訳)『楽器の科学 美しい音色を生み出す「構造」と「しくみ」』講談社
https://www.amazon.co.jp/dp/B09XMZ238P
弾く人も聴く人も、科学の視点で音楽を楽しもう!
ピアノ、バイオリン、トランペット、マリンバ……「魅惑の響き」はどう作られるのか?
楽器の個性を生み出す「倍音」とは?
音色を美しくする「共鳴」とは?
バイオリンの最重要パーツ「魂柱」とは?
楽器の素晴らしさを引き出すコンサートホールの条件は?
そして、プロが考える「最高の楽器」とは?
フランスで最も栄誉ある音楽勲章を最年少受章した著者が楽器の秘密を解き明かす!
ブルース・ヘインズ『古楽の終焉 HIP〈歴史的知識にもとづく演奏〉とはなにか』アルテスパブリッシング
https://www.amazon.co.jp/dp/B0C1BLGF92
2007年に発表された本書(The End of Early Music: A Period Performer’s History of Music for the Twenty-First Century)は、音楽史のとらえ方を根底から更新してクラシック音楽家の意識変革をうながし、返す刀で「原典至上主義」に拘泥する古楽演奏にも疑問符を突きつけ、発表と同時に大きな話題を巻き起こした。
「HIP」と「修辞学的音楽(rhetorical music)」の理想を知り、楽譜に書かれた音楽をただ再現するだけでなく、生命力にあふれたパフォーマンスをおこなうために、すべての音楽家がひもとくべき書、待望の完訳!
マーク・エヴァン・ボンズ/堀朋平、西田紘子(訳)『ベートーヴェン症候群 音楽を自伝として聴く』春秋社
https://www.amazon.co.jp/dp/4393932226
ベートーヴェンの交響曲に彼の「人生の苦悩」を、モーツァルトのソナタに「母を喪った悲しみ」を――病的なまでに音楽に作曲家の自己のほとばしりを聴こうとする「ベートーヴェン症候群」。過去200年にわたって"聴取"に大きな影響を及ぼしてきたこの"病"の実態を解き明かす。
バリー・マイルズ/須川宗純(訳)『フランク・ザッパ』Pヴァイン
https://www.amazon.co.jp/dp/4910511121
ロック、ジャズ、現代音楽、ドゥーワップなど様々な音楽を取り入れた幅広い雑食性と60枚以上におよぶ膨大な作品数。シリアスな政治的メッセージとブラックなジョークの入り混じった歌詞世界。今なお、ロック史上最大の異端ミュージシャンとして存在感を失わないフランク・ザッパの決定的評伝!
柳沢英輔『フィールド・レコーディング入門 響きのなかで世界と出会う』フィルムアート社
https://www.amazon.co.jp/dp/4845921243
2000年代以降、小型軽量で廉価なデジタル・レコーダーの登場、そしてSNSの台頭により、フィールド・レコーディングという言葉を目にする機会がますます増えてきました。とくに昨今は新型コロナウイルスの状況下において、「音」や「聴くこと」について人々の関心が高まりつつあります。
フィールド・レコーディングは、現代音楽やサウンド・アートの文脈、60年代末からつづくサウンドスケープと環境音楽、90年代では音響派ブームのなかで取り上げられる機会の多かった音楽ジャンルであると同時に、人類学・民族音楽学などの学術の領域での研究手法として、そして電車や野鳥の録音をするような趣味としても広くおこなわれてきたものです。
しかし、こうした文脈をまとまった形で取り上げ解説される機会は多くはありませんでした。
フィールド・レコーディングには響きとしての音楽的な面白さだけでなく、その音が生じる場所の歴史や生態環境、録音者の視点といった文脈が深く結びついています。
本書では、こうしたフィールド・レコーディングが歩んできた様々な文脈を統合したうえで、その全体像を捉え直し、歴史、理論、実践方法を1冊で知ることができる内容となっています。現在的な視点からフィールド・レコーディングを網羅的に紹介し、そのすべてが理解できる国内で初めての1冊です。
ele-king編集部(編)『別冊ele-king イーノ入門 音楽を変革した非音楽家の頭脳』Pヴァイン
https://www.amazon.co.jp/dp/4910511148
アンビエント・ミュージックの発案者、ポップと実験音楽を横断する希代の芸術家にして思想家、詳細なディスクガイドを中心に巨匠ブライアン・イーノの全音楽キャリアを俯瞰する、一家に一冊の保存版
非音楽家の誕生 / オブスキュアの革命 / サティ、ケージ、ライヒからイーノへ / ボウイのベルリン三部作 / クラウトロックとのつながり / アンビエントの発案 / トーキング・ヘッズとの蜜月 / 『No New York』の衝撃 / ドゥーワップからヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ドナ・サマーまで / ポスト・パンク時代の門下生たち / ジョン・ハッセルとの絆 / アフリカ音楽への熱狂 / スターたちのプロデューサー / 政治的アクティヴィストとして / ほか
大嶋義実『演奏家が語る音楽の哲学』講談社
https://www.amazon.co.jp/dp/B09YR7L96J
音楽ではなく、譜面を通してそれまで「不在」であった音楽とのあいだに通路を開き、広く交歓を可能にする想像力を持つ者である。
音楽は演奏家を抜きに現実化しない。人間によってしか血の通った音楽を、楽譜の向こう側にある音楽を蘇らせることはできないのである。
本書は芸術大学で指導する一方、演奏家としても第一線で活躍中のフルーティストによる、演奏という観点から見た音楽論である。つねにその瞬間瞬間の現れとしての音楽を生み出す者だからこそ得られる洞察、そこから個性と普遍という大きな問題へも視野を広げていく。
周東美材『「未熟さ」の系譜 宝塚からジャニーズまで』新潮社
https://www.amazon.co.jp/dp/B09YD5QNY8
わたしたちはなぜ、未完成なスターを求めるのか?
若さや親しみやすさで人気を得るアイドル、ジュニアから養成されるジャニーズ、音楽学校入試が毎年報じられる宝塚歌劇団……成長途上ゆえのアマチュア性が愛好される芸能様式は、いかに成立したのか。近代家族とメディアが生んだ「お茶の間の人気者」から日本文化の核心を浮き彫りにする、気鋭の社会学者による画期的論考。
永嶺重敏『歌う民衆と放歌高吟の近代 放歌民衆から唱歌・軍歌を歌う国民へ』勉誠出版
https://www.amazon.co.jp/dp/458537003X
万葉時代に若い男女が愛を歌い交わした「歌垣」、船唄や木遣り歌などの仕事唄など、古来日本人の生活は歌とともにあった。
しかし、明治になり、文明開化の流れの中で、卑猥な歌詞の俗謡、乱酔放歌などの暴行事件などが多発したことにより、放歌―辺りかまわず大声で歌うこと―は野蛮な行為と見なされ、処罰の対象となった。
日常生活のありふれた行為であるがゆえに、意識されず、記録に残されることの少なかった「放歌」の歴史を、犯罪記録として残った資料、多数の図版とともに丹念に紐解く。
明治の民衆の「歌う文化」を見つめなおす格好の一冊!
ピート・フレイム/新井崇嗣、瀬川憲一(訳)『ロック・ファミリー・ツリー』みすず書房
https://www.amazon.co.jp/dp/4622078023
ザ・ビートルズを主軸にロックミュージックが躍動した60-70年代、アーティスト同士の相関関係を樹形図で表したファミリーツリーは、その後のポピュラー音楽研究に多大な影響を与えた。主要なロックバンドの変遷を表した31枚のツリーを観音綴じにし、著者コメントを全文訳出。50年代ロカビリーから70年代プログレッシブやニューウェイブに至るまで、同時代にアーティストたちと交流したピート・フレイムの極私的視座から、英米ロックの系譜を俯瞰したファン必読の書。
広瀬大介『オペラ対訳×分析ハンドブック リヒャルト・シュトラウス/楽劇 サロメ』アルテスパブリッシング
https://www.amazon.co.jp/dp/4865592601
リヒャルト・シュトラウス研究の第一人者で、作品解説・字幕制作などに定評のある広瀬大介が、満を持して世に送るリブレット対訳の決定版。
第1弾としてお届けするのは、モダニズムの幕を開けた傑作『サロメ』。
オスカー・ワイルドのスキャンダラスな戯曲にシュトラウスが付曲するにいたった経緯やその後の受容の過程などについて述べた「解説」のほか、おすすめCD・DVD、作品の背景や音楽構造についてのコラムなども掲載。
宮本直美『ミュージカルの歴史 なぜ突然歌いだすのか』中央公論新社
https://www.amazon.co.jp/dp/B0B4CR8K62
物語と台詞、そして歌で成り立つ舞台、ミュージカル。ヨーロッパの歌劇と大衆的な娯楽ショーをルーツに、アメリカで誕生した。本書は娯楽ジャンルとして成長してきたミュージカルの本質を、音楽に注目して探る。オペラとミュージカルの違い、楽譜やレコードによる流通、ティン・パン・アレーの音楽供給システムとの協同、ポピュラー音楽の流行との連動とずれ、映画やドラマの劇伴音楽との異同を視野に入れて立てる「なぜ突然歌い出すのか」という問いは、言葉と音楽という古くからの問題の新しい地平を拓く。
坪口昌恭『神曲のツボ! 「カッコいい」の構造分析』アルテスパブリッシング
https://www.amazon.co.jp/dp/4865592563
“カッコいい"曲ではいったい何が起きているのか? 並の曲とはどこがどう違うのか?
ロバート・グラスパー、ブラッド・メルドーを始めとする最新型ジャズから、ウェザー・リポート、マイルス・デイヴィス、チャーリー・パーカー、ディアンジェロ、ジェイムズ・ブレイク、デヴィッド・ボウイ、さらにはYMO、SMAP、ブルガリアン・ヴォイスまでを見開き2ページに1曲の読みやすい構成で、鋭くディープに分析!
東京ザヴィヌルバッハ、Ortanceほかで活躍する凄腕ジャズ・キーボーディストが「神曲」を分析、コード譜やメロディー譜、リズム譜を駆使して、作曲・アレンジで発揮されるクリエイティヴィティの秘密に迫る!
タワーレコードのフリー音楽誌『intoxicate』の人気連載が待望の書籍化!
中野正昭『ローシー・オペラと浅草オペラ』森話社
https://www.amazon.co.jp/dp/4864051712
大正期のオペラ受容は、翻訳オペラ・オペレッタを中心とする興行化の時代だった。
本格オペラを掲げた外国人ローシー、大衆が熱狂した浅草オペラ、それらのライバルと目された宝塚少女歌劇。
本書では、台本をはじめとする新資料をもとに、大正期の翻訳オペラの実態を、興行・上演の観点から検証する。
ニコラス・クック/福中冬子(訳)『音楽とは ニコラス・クックが語る5つの視点』音楽之友社
https://www.amazon.co.jp/dp/4276112168
オクスフォード大学出版局の入門書シリーズ『Very Short Introductions』のひとつ『Music』第二版(2021年刊行)の翻訳書。演奏実践の研究を通じた音楽史記述で知られる音楽学者ニコラス・クックが、西洋の音楽伝統にとどまらない様々なイシューを平易な文体で紹介し、リアルな人びとがリアルな世界で創り出す「諸音楽」を考えるための5つの視点を展開する。キーワードは、文化実践としての音楽、ベートーヴェン、初音ミク、楽譜と録音、オーセンティシティー、スター文化、世界音楽、音楽と共同体、SNS、ディジタル・テクノロジー、グローバル化、ポストコロニアル主義、など。翻訳は東京藝術大学音楽学部教授・福中冬子。
芸術や歴史の知識・教養は言うまでもなく、今の時代に求められている「疑う力・問題発見能力=情報リテラシー」を身につけるための格好の1冊。レポート作成や自由研究のテーマ選びに、ゼミでのディスカッション用テキストに、読書会の題材に、手始めの1冊として役立つ。
齊藤聡『齋藤徹の芸術 コントラバスが描く運動体』カンパニー社
https://www.amazon.co.jp/dp/4910065091
2019年に惜しくも世を去ったコントラバス奏者、齋藤徹。70名以上におよぶ関係者からの聞き取り、残された音盤約60枚を読み解くことで描き出される、ひとりの音楽家の肖像と軌跡。ジャズ、タンゴ、邦楽、雅楽、能楽、巫楽、即興音楽、クラシック、現代音楽、うた、ダンス、舞踏、書、詩、美術、演劇など、あらゆる表現領域を巻き込みながら、アジア、ヨーロッパ、北米、南米を自由に旅する——日本の音楽の特異点、いまなお蠢き続ける運動体=「齋藤徹の芸術」とはなにか。
藤田彩歌『カーザ・ヴェルディ 世界一ユニークな音楽家のための高齢者施設』ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BG4JLCZ6
イタリア・ミラノにある高齢者施設「カーザ・ヴェルディ」は、「音楽家が、引退後も生涯音楽的な生活ができるように」という作曲家ヴェルディの願いを込めて1902年に設立されました。
現在では、高齢者とは別にミラノ市内の音大に通う学生を最大16名まで受け入れており、私はその「若手音楽家」の一人として入居することに……。
音楽家ばかりが一つ屋根の下で暮らすと一体どんなことが起きるのか、音楽家という共通点を持つお年寄りと若者達のあいだに、どんな交流が生まれるのか――驚きの連続だったカーザ・ヴェルディの暮らしをご紹介します。
韻踏み夫『日本語ラップ名盤100』イースト・プレス
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BC8SDP4W
日本のヒップホップの流れがつかめるディスクガイド
気鋭の批評家がこれから日本語ラップを知りたい・聴きたい人に向けて、日本語ラップの名盤100枚(+関連盤200)の聴きどころをレビュー。
「アメリカのヒップホップについての歴史書はすでに多くの優れた本が出版されている。しかしながら、日本のヒップホップ、すなわち「日本語ラップ」についての言葉はいまだにまったく足りていないというのが現状である。そこで、日本語ラップとは何かなにかを知りたい新しいリスナーたちのために、入門書として書かれたのが本書である。」(本書「はじめに」より。)
ブレイディみかこ『オンガクハ、セイジデアル』筑摩書房
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BDFBHGGH
イギリスの出来事が、その先の未来と、今の壊れた日本を予見する。ロックと英国の社会・政治を斬りまくる初期エッセイ。『アナキズム・イン・ザ・UK』の前半部に大幅増補。著者自身が体験してきた移民差別と反ヘイト。拡大するアンダークラス。イギリスの音楽から労働者階級のプライドを自覚した著者にとっても、音楽と政治は切り離せない。
牧野直也『チャーリー・パーカー伝 全音源でたどるジャズ革命の軌跡』アルテスパブリッシング
https://www.amazon.co.jp/dp/4865592598
1930-50年代、ジャズに革命を起こしたサックス奏者、チャーリー・パーカー(1920-1955)。
彼が残した膨大な音源をすべて聴き込み、その「音楽的人間像」を初めて明らかにした決定的な大著!
手に入るかぎりのあらゆる音源を丹念に聴きこむとともに、伝記、研究書、関係者の証言などの資料も徹底的に検証し、 これまでのパーカー像を根本から刷新!
パーカーの新たな「音楽的人間像」を打ち立てた世界にも類のない画期的な労作です。
パーカーの生い立ちからキャリアの全貌、悲劇的な死までを追いながら、ベイシー、ヤング、ガレスピー、バド・パウエル、ローチ、マイルスなど、30~50年代ジャズ・シーンの変革を担った主役たちも描いた本書は、ジャズおよびアメリカ音楽を知るうえで必読の書となっています。
青柳いづみこ『ショパン・コンクール見聞録 革命を起こした若きピアニストたち』集英社
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BH87XC6Q
5年に1度行われ、世界三大音楽コンクールで最も権威があるショパン・コンクール。若きピアニストの登竜門として有名なその第18回大会は、日本そして世界中でかつてない注目を集めた。
デビュー以来 “一番チケットが取れないピアニスト” 反田恭平が日本人として51年ぶりに2位、前回大会も活躍した小林愛実が4位とダブル入賞をはたし、YouTuberとしても活躍する角野隼斗、進藤実優、牛田智大、沢田蒼梧らの日本勢も大健闘した。
さらに、優勝したブルース・リウ、同率2位のガジェヴ、3位のガルシア・ガルシアなど、予選・本選を戦ったピアニストたちは皆レベルが高く個性的で、彼らは既存の価値観を覆すような “革命的な” 演奏を見せた。
これまでと大きく変わった今大会の現場では何が起こっていたのか?
音と言葉を自在に操る著者が検証する。
後藤護『黒人音楽史 奇想の宇宙』中央公論新社
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BLYBP5QM
奴隷制時代から南北戦争、公民権運動をへて真の解放をめざす現代まで。アメリカ黒人の歴史とは、壮絶な差別との闘いであり、その反骨の精神はとりわけ音楽の形で表現されてきた。しかし黒人音楽といえば、そのリズムやグルーヴが注目された反面、忘れ去られたのは知性・暗号・超絶技巧という真髄である。今こそ「静かなやり方で」(M・デイヴィス)、新しい歴史を紡ごう。本書は黒人霊歌からブルース、ジャズ、ファンク、ホラーコア、ヒップホップまで、黒人音楽の精神史をひもとき、驚異と奇想の世界へと読者をいざなう。古今東西の文献を博捜した筆者がおくる、新たな黒人音楽史。
エンニオ・モリコーネ、アレッサンドロ・デ・ローザ/石田聖子、岡部源蔵(訳)『あの音を求めて モリコーネ、音楽・映画・人生を語る』フィルムアート社
https://www.amazon.co.jp/dp/4845920271
『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『死刑台のメロディ』『エクソシスト2』『ニュー・シネマ・パラダイス』『ミッション』『アンタッチャブル』『海の上のピアニスト』『鑑定士と顔のない依頼人』『ヘイトフル・エイト』……
数々の名作で知られる映画音楽界の巨匠エンニオ・モリコーネと若き音楽家アレッサンドロ・デ・ローザとの対話によって紡がれる、マエストロの生涯と創作の真実。
映画音楽は映画という芸術に対して何をすることができるのか。音楽としての純粋性を損なうことなく、大衆が理解可能な音楽はいかにして可能か。音楽は人と人をどのように結びつけることができるのか。そして、なぜ人は作曲を続けるのか。
本書には、モリコーネが歩んできた人生、映画音楽家としての活動、 経験、その音楽が生まれた契機と育まれた経緯のみならず、彼が生きた歴史・社会・文化的状況をめぐる思いのすべてが綴られる。\
吉原真里『親愛なるレニー レナード・バーンスタインと戦後日本の物語』アルテスパブリッシング
https://www.amazon.co.jp/dp/4865592652
図書館に人知れず眠っていたふたりの日本人からの手紙がいま、語りはじめる。
カズコとクニ、そしてレニー ──
芸術と愛に生きた巨匠バーンスタインの実像にせまる感動のノンフィクション!
“……でもレニー、僕はあなたを愛してしまったし、忘れることはできないのです。
あなたは僕にこう言いましたよね。
「誰かと恋に落ちたくはない、なぜならそれは、自分の人生を変えてしまうから」"(本文より)
ワシントンの図書館で著者が出逢った数百通の手紙。
それは、世界の巨匠レナード・バーンスタインと知られざるふたりの日本人との心の交歓の記録だった。
高山博『ビートルズ 創造の多面体』アルテスパブリッシング
https://www.amazon.co.jp/dp/4865592660
英リヴァプールで誕生したビートルズがデビュー・シングル〈ラヴ・ミー・ドゥ〉をリリースしてからちょうど60年。今年は長編ドキュメンタリー映画『Get Back』も公開され、彼らの音楽が放つ普遍的な魅力にあらためて注目が集まっています。
60~70年代の文化や社会、メディアとの相互作用のなかで、彼らは何を感じ、何を求め、何をなしたのか? 斬新な作曲技法も多彩な観点とあらたな手法であざやかに分析!
若いリスナーをいまなお獲得しつづけるビートルズの新しさと創造性、現代における意味を多角的に解き明かします。
ひいては戦後社会の文化論、メディア論、消費社会論としても読み応え十分、音楽と社会を総合的にとらえた本格派ビートルズ論の登場です!
ヨハン・マッテゾン/村上曜(編著・訳)『マッテゾン「新しく開かれたオーケストラ」(1713年)』道和書院
https://www.amazon.co.jp/dp/4810530108
奇才・マッテゾンによる「音楽入門」。当時の聴衆・アマチュア音楽家に向けて書かれた、最初期の著作。楽譜の読み方,流行の曲種,様々な楽器,伊・仏・独の音楽の違い。18世紀前半のドイツ音楽界を知る貴重な書。
マリア・ノリエガ・ラクウォル/藤村奈緒美(訳)『キッチンからカーネギー・ホールへ エセル・スタークとモントリオール女性交響楽団』ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BXKGGJFY
偏見と差別が支配する社会で、性別・人種・階級の壁を打ち破った女性たちの記録
音楽界におけるこの女性運動がきっかけとなって世の中にも変化が訪れ、来るべき世代のための新たな社会が形づくられていった。従来は男性のものだった交響楽団の基盤を揺さぶり、あらゆる職業の女性たちに平等の機会への扉を開け放ったことで、エセル・スタークとマッジ・ボウエンは社会全般における女性の地位も向上させたのである。
だが、駆け出しの音楽家たちの楽団を描いたこの物語、カナダの音楽に革命を起こしたモントリオールの弱き者たちの物語は、突き詰めれば、さまざまな国籍、民族、宗教、社会階層、年齢の人々をひとつに結びつけるものについての物語だと言える。境界を乗り越え、偏見を打ち破り、コミュニティを築く音楽の力の物語。また、懸命な努力と決意にユーモアと寛大さがたっぷりと加われば夢はかなえられる、ということを改めて思い出させてくれる物語でもあるのだ。(本文より)
中原仁『ブラジリアン・ミュージック200』アルテスパブリッシング
https://www.amazon.co.jp/dp/4865592709
ブラジル独立200周年記念出版!
広大で豊かなブラジル音楽の歴史から名曲200をセレクトし、オススメの音源とともにガイド!
1899年のカーニバル・ソング第1号から、21世紀のヒット曲まで、ショーロ、マルシャ、バイアォン、サンバからボサノヴァ、MPB、ヒップホップまで、ジャンルと時代、地域を広くカバーしながら、20世紀前半のピシンギーニャ、ノエル・ホーザに始まって、ボサノヴァのアントニオ・カルロス・ジョビン、ヴィニシウス・ヂ・モライス、ジョアン・ジルベルト、トロピカーリアのカエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジル、サンバのカルトーラ、そしてシコ・ブアルキ、ミルトン・ナシメント、ホベルト・カルロスからポップ、ヒップホップ勢まで、主要な作曲家・ミュージシャン、シンガーを網羅。
ブラジル音楽の名曲事典としても役に立つと同時に、広大なブラジル音楽の全体像を知るために最適のガイドとなっています。
沼野雄司『音楽学への招待』春秋社
https://www.amazon.co.jp/dp/4393930401
○日本経済新聞(2023/3/25)白石美雪氏・評
音楽に関心をもつすべての人に、音楽学の存在をアピールする良質な入門書の誕生である。
○読売新聞(2023/3/26)苅部 直 氏・評
硬軟さまざまな主題と、多くの方法をとりまぜながら、音楽学の「自由と愉しみ」が一冊に盛りこまれている。
○毎日新聞(2023/3/25)
編集も実に手際が良い。何しろ上記のような軽い話題が、音楽史学、音楽心理学、音楽解釈学、音楽社会学、音楽民族学、音楽美学、音楽政治学の7章にきちんと収斂するのだから。
大熊ワタル『我方他方 サックス吹き・篠田昌已読本』共和国
https://www.amazon.co.jp/dp/4907986033
没後30年を経て甦る、稀代の音楽家の人と音楽。
生活向上委員会大管弦楽団、じゃがたら、コンポステラ、東京チンドンなどで活躍し、1980年代末から90年代初頭の「時代」を駆け抜けたサックス吹き、篠田昌已(1958-92)。その没後30年と再評価を期して、2008年に少部数だけ発行された入手困難な冊子『コンポステラ★星の広場で』を増補・再構成。新たに本人のインタビューを発掘し、町田康、大友良英、細川周平、平井玄各氏ら一線で活躍する表現者50余名による寄稿を収録する。ミュージシャン篠田昌已の《これまで》と《これから》がここにある!
野間秀樹『K-POP原論』ハザ
BTS、BLACKPINK、MAMAMOO……。なぜ私たちの魂が震えるのか、その感動の秘密へ。『ハングルの誕生』の著者による、至上のK-POP入門!
韓国=朝鮮と日本、双方の血を嗣〔つ〕ぎ、言語学者であり美術家でもある著者が、そして音楽をこよなく愛する著者が、ヒットチャートやお金などの市場の論理からではなく、言語学と美学の視座から、K-POP MV(ミュージック・ビデオ)のことば、こゑ〔コエ〕、音と光、そして身体性をこれでもかとばかりに愉しみ尽くす! しばしば〈Kぽ愛〉も炸裂させつつ、新たなるコレアネスクの世界像たちを満腔の熱き思いで読者と共にする。Kアートの歓喜と喜悦の原理を読み解く、講義形式の評論エッセイ。