『相棒』シリーズを〝国民的ドラマ〟と呼ぶことに抵抗を感じる人は、まずいないだろう。そして、国民的ドラマである、ということは、こういうことなのだ。それは、ただ単に多くの人から支持されている、ということではなくて、こんなふうに愛情を持って語ることの幸せを、一人一人がそれぞれの形で持っている、ということに他ならない。家族だったり、友人だったり、同僚だったり。優れたドラマはそれだけで人の距離を近づけ、私たちの共通言語になる。[…]
誰かと語り合い、それを楽しみにすることで毎日を頑張れたりするものが、自分にあることは尊い。国民的ドラマを愛することの幸せが、そこにはある。
(辻村深月、2015『図書室で暮らしたい』講談社)