The shoulders of Giants
インターネット
そして繰り返すが、「仮想現実から拡張現実へ」というキャッチフレーズは情報産業のトレンドの変化を表現するもの以上の意味を帯びている。それは僕たちの虚構観そのものの変化でもあるのだ。20世紀的な劇映画は、ディズニーのプリンセスストーリーたちや『スター・ウォーズ』、そしてMCUが代表するように半ばグローバルなコミュニケーションツールとなり、そして『ポケモンGO』が代表する21世紀的なアプリゲームは通勤や買い物といった生活そのものを娯楽化する。「ここではない、どこか」に、外部に越境することではなく「ここ」に、内部に深く潜るための回路を、いま、僕たちは情報技術に、そして虚構そのものに求めつつあるのだ。
(宇野常寛、2020『遅いインターネット』幻冬舎)
まさぐるようにクリックして窃視する、これこそ当時のマルチメディアの、ハイパーリンクの経験である。クリック=愛撫=窃視。
(千葉雅也、2018『意味がない無意味』河出書房新社)
無償の窃視という素朴さ! 「不思議の国」を覗き回ってそれで済まされるという素朴さ! いまやリンクを「踏む」というのは多少なり詐欺(グローバルな)に引っかかることであり、利害の分岐にコミットすることであり、かつてヴァーチャルと言われたネット空間は、厳しい現実にすっかり飲み込まれてしまった。もはやヴァーチャル「でしかない」ものではない。マルチメディアもハイパーリンクも、生臭い食い扶持になってしまった。
(千葉雅也、2018『意味がない無意味』河出書房新社)